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輪編みの編み方徹底図解 ホームへ
棒針を使った輪編み技法の図解です。歴史的輪編み技法の解説もあります。

2.2 靴下の輪編み

最初に靴下のように小さな作品の輪編みを見て行きます。靴下は、長い間編み物製品で最も一般的なもので、靴下編み機が発明されるまでは、すべての製品需要が手編みによって供給されていたのです。そのために、編む速さは非常に重要で、マシーンのように速い編み手が誕生しました。ここでは、歴史的に古いと思われる順序で見て行きます。


No.オリジナル写真(部分)編針の位置引用文献データ
(1) 011.jpg 001s.jpg
'Practical Knitting' pp21
Rae Compton
Hamlyn Publishing
1981
Original Photo:
The Sutcliffe Gallery,
Whitby
撮影場所イギリス?
撮影年月不明
作品手袋か靴下?
編み姿勢座位
編み方アメリカ式

前章で紹介したお婆さんの手元です。手袋か靴下のような小さな輪編みを編んでいるところです。「編み針」は親指と中指で支え、編んでいる部分の目をかなり寄せて持っています。このため、「休み針」の上端がお互いに接近し、人差し指の第二関節あたりから上に出ています。針の角度から見て、一段の終わりの方を編んでいるところでしょう。このように細かい輪編みの端目に近い部分でも、「編み針」同士の角度がきっちり出ています。

大きな特徴は「休み針」が両手とも、人差し指と中指の間を抜けていることです。普通、「休み針」は中指と薬指の間か、もっと小指よりを抜けることが多いのですが、「休み針」がここを抜けているために、編む際、両手の中指が休み針同士を左右から押しつけて、編地を圧縮しているようです。これは単に編地が小さいからかもしれませんが、次のような想像もできます。私たちは編目を棒針上で動かすために時々、編地をしごきます。しかし、彼女は中指で休み針を押すことで、ベルトコンベアのように左の針の目を針先へと、自由に送ることができたのではないでしょうか。そうではなくても、編みながら編目同士が自然に接近していき、一針分を編みきるまで、目をしごくことはなかったのでしょう。写真は一針の終わりの目に近いところだと思いますので、このときがもっとも編目が圧縮されているときだと思います。

棒編み針の長さは短めです。手の高さは人差し指がバストライン付近にあります。


No.オリジナル写真(部分)編針の位置引用文献データ
(2) 011.jpg 001s.jpg
'Knitting by the Fireside
and on the Hillside' Cover
Linda G. Fryer
The Shetland Times
1995
Original Photo:
Thomas Kent
撮影場所シェットランド
撮影年月1900
作品靴下
編み姿勢立位
編み方アメリカ式

よもやま話で何度か取り上げた、ピートを運びながら靴下を編む女性の手元写真です。写真は実際に歩きながら編んでいるところではなく、撮影のために立ち止まっているところです。したがって、手はウェストラインに下ろされています。(手から下の縞がスカートの模様です。)この写真は、正面から撮影されているため、構えが良く分かります。休み針は両手とも中指と薬指の間を抜けて親指の付け根でしっかりと挟まれています。おそらく手元を見ないでも編めるようにするためと思いますが、人差し指が針の先を確かめるような位置に置かれています。靴下や編み針を落とさないようにしっかりと握っていながら、指先には柔らかい余裕が残されているのがわかります。状況から考えて編み針は靴下専用のものと思われますが、やや短めです。

私たちは当初、歩きながら編む靴下は、ただのチューブ状の靴下と思っていましたが、写真にははっきりと踵が写っています(緑色の部分)。歩きながら編んだ段数を数えて、踵の引き返し編み(たぶん)をするとは...。絶句。


No.オリジナル写真(部分)編針の位置引用文献データ
(3) ウィットビー ウィットビー
'Folk Socks' pp18
Nancy Bush
Interweave Press
1994
撮影場所イギリス
撮影年月不明
作品靴下?
編み姿勢座位
編み方アメリカ式

シースと呼ばれる木製の筒をウェストベルトに刺し、その穴に右手の「編み針」を差し込んでいます。右手はペンシルグリップのように針先を持っています。シースは右手で糸を掛けるために「編み針」を離したとき、編地を支えるためのものです。シースと針の角度を見ると、それほど奥深くまで差し込んでいるのではないようです。針は靴下用の短めのものを使っています。左手の指先などを見ると、編み地は主にシースに入れた「編み針」で支えているようで、両手はほとんど自由になっているように見えます。その割には、写真の手を見ると、指先に力みが感じられます。かなり若く見える女性ですので、まだそれほどのベテランではないのかも知れません。しかしシースを中心とした輪針の配置はぴったり決まって見事です。


No.オリジナル写真(部分)編針の位置引用文献データ
(4) 写真 写真
'Folk Socks' pp6
Nancy Bush
Interweave Press
1994
撮影場所キーヌ島
撮影年月1951
作品靴下
編み姿勢座位
編み方アメリカ式

5本の針を使って靴下を編んでいます。この写真で、膝の上に置いた靴下はかなり編みあがっていて、編む部分が胸の前あたりにまで来ています。そのため編口は水平に近くなっていますが、「休み針」は親指と人差し指の間を抜けているため、それでも「垂直型」となっています。こんな小さな輪編みに5本も棒針を使うと針先が邪魔になるのではないかと心配になります。この写真で見ると、右手の糸が「休み針」に今にも掛かりそうに見えます。首はあごが胸に埋まるほどうつむいていますし(写真をとられるのにはにかんだのかもしれません)、椅子の横には子供がちょこんと座らされています。写真全体のムードは心の和むものがあります。服装も美しいエストニアの民族衣装をまとっています。撮影年代が最近ということもあり、おそらくこの靴下は自家用でしょう。生活の糧を得るための編み物ではなく、生活を豊かにするための編み物のようです。


No.オリジナル写真(部分)編針の位置引用文献データ
(5) アナトリア靴下 アナトリア靴下
'Anatorian Knitting Designs'
pp75
Betsy Harrell
Redhouse Press
1981
撮影場所アナトリア?
撮影年月現代
作品靴下
編み姿勢座位
編み方フランス式

現代のスイス女性が靴下を編んでいる写真です。スイスはフランス式の持ち方のようですが、フランス式でも輪編みの配置は変わらないことが分かります。この写真では、編み込みをしているのですが、ちょっと見たところ一本の糸しか持っていないようです。しかし、実際は赤黒二色の糸を持っていて、黒糸は中指と薬指の間、赤糸は薬指と小指の間で挟んでいます。いま、左手人差し指に巻きつけているのは黒糸ですが、赤糸はどうするのでしょうか?不明です。写真では、ちょうど針の最初の目あたりを編んでいます。「休み針」は左手小指の外側を抜けています。解説にはお孫さんのために編んでいると書かれていますので、おそらく趣味の編み物だと思われます。ただ、靴下のサイズからしてかなり大きなお孫さんのようですが、そのようなお孫さんのいる年齢にしては手が若いと思います。19世紀の年配の人の写真と比べると、現代人がいかに若々しいかが分かります。

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